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第233夜「A.Wに別れを告げる・The way of the Three」③

◇ 少年と犬

とある雪がちらつく晩のこと。 
サーカスが一日の公演を終えた後で、退屈した団員2,3人に囲まれ 小さなアレンはまたいじめられていた。
酔っ払ったコジモが彼に馬乗りになって体を押さえつけ、悪友達はその赤くただれた腕を見て気味悪がり大騒ぎ。
コジモはその後も アレンに「同じ買われた者同士~」となれなれしく絡んでみたり、安酒をラッパ飲みしながら 自分は「こんな所」にはふさわしくない貴族の血を引いているのに、とわめき散らすなどしていた。

その場をようやく解放されたアレンが厨房に行くと、また理不尽な暴力が彼を待っていた。
コックは もうおまえの飯なんかないと汁椀を投げつけ、彼は空きっ腹のままライオンの餌やりを強要された。

重いカートを押していく途中でとうとうアレンはへたりこんでしまうが、ふとその脳裏に、さっきのコジモの醜態が浮かんできた。
己の不遇をかこちながら、そのうっぷん晴らしで時間をつぶし 日々堕ちていくばかりのダメな大人。

--- はっ弱い奴… オレは違う   いつか絶対自分の居場所をみつけてやる ---

力を込めて立ち上がろうとした時 ふと脇を見やった彼の目は、あの流れ者のピエロが木の下にうずくまっているのをとらえた。
傍には置物のようにお座りでじっとしているお供の犬も。 しかし犬の視線はしっかりこちらを向いていた。
どうも尋常でない中年男の様子が気にはなったが、今は構っている暇がない。 少年は引き続き自分の仕事に集中した。

夜も更け、やっと束の間一人きりになれたアレンは 道具置き場でこっそり盗み食いに精を出していた。
そこへ突然さっきの犬が現れ、大事な商売道具のボールを咥えたと思ったら あっという間に逃走…  
冗談じゃない。 ギョッとしたアレンは必死に追いかけた。 
が、全力で走る犬に追い付けるわけもなく。 

早々にあきらめて雪の地面に大の字で転がったアレンの所に、犬は再び戻ってきた。 
ボールを戻しに来たかと一瞬ほっとしたが、違う。
手を伸ばす少年の目前でそれをヒョイと奪うと、犬はからかうようにボールを持ったまま軽々と身をかわし あるいはわざと目の前で弾ませてみたりとやりたい放題で、絶対に渡そうとしなかった。
その動きは 間抜けなピエロと賢い犬がコンビで披露する芸のように見事なものだったが、とても遊んでいる余裕などないアレンはつき合いきれず 早々に音を上げた。

再び自暴自棄でその場にふて寝を決め込んだアレン。 
すると、外気で冷え切った彼の頬を 温かい犬の舌がなでて行った。
驚いて目を見開くと、犬の顔はまだ至近距離にあった。 犬はアレンをじっと見つめた後 「ワン!」と一声上げ、くるっと方向転換して勝手にテントに戻って行った。
アレンの傍には、あれほど手を焼いたボールが 何事もなかったかのように置かれている。 「……… なんだあいつ」

少年の胸の中は 何だか温かくてくすぐったい不思議な感覚で満たされていた。 



ここが一番の見せ場でしたよね。 少年と犬との触れ合いのシーン。
アレンのリアクションのどれも生き生きして可愛かったし(地べたに大の字で転がるのは最近もやってたけど癖なんですかねw)
犬は変に漫画っぽくしない自然な描かれ方に和みました。 

どこにも救いのない環境を独りで乗り切ってきた少年が、自分に向けられた純粋な好意に初めて接して戸惑う顔も… ここを漫画で見ることができて本当に良かったと思いました。


● はじまりのアレン

そういえば 前も一応断ってはいますが、サーカスの名無しの少年(主人公)の方をずっと「アレン」と呼んでいるので紛らわしく…(すみません(;^_^A) ここでは犬が「アレン」という名だったんですよね。 
ただ、今回のこの辺りではまだ 少年は犬の名がアレンであることも ピエロの名がマナであることも知りません。


それにしても何故この犬には「アレン」の名が付いていたんでしょうか?
ただの偶然? まぁ物語という点からは理由もなく“同名”はないと思うんですが…

当時すでに “マナの傍にネアが別人「アレン」になり替わって現れる”とする“預言”はありました。
だからそれに関係する誰かが何かの目的で意図的に名付けた可能性はあるかも知れません。 
でもそれがもしあったとしても、それ以上のことは情報不足で 何も浮かんでこないですね。

なので一旦ここは保留とし、最近つらつら考えていたことを少し。


はじめに、この犬がサーカスの少年を“マナの傍”に引き寄せる役を担ったことは確かなんですよね。 
この時期のクロスやティムすら 少年の存在は認識していながら“本人”特定できなかったというのに… これはなかなか凄い(笑)
もし仮に少年と犬とのこんな素敵な交流がなかったら、ピエロは少年と深く関わることもないまま いずれここを出てそれっきりだったかも知れず…

少年と仲良しになった犬はその後ほどなく死んでしまいますが、その死をきっかけに少年は初めてマナと繋がりを持ちます。 
そして遂には犬の名「アレン」を引き継ぐことになる… 
つまり犬は、件の“預言”=「“アレン”は必ずマナの傍に現れる」を成就させる鍵を握っていたと言っていい。
流れ的にも、とても美しいですよね。

本物の「アレン」の出現より早くその名を付けられ、マナの傍に置かれた犬。
本物の出現により、場所を譲るように 自分はひっそりと退場していった犬。
“DOG”の反対が“GOD”なのは関係ないと思いますが←
「アレンの物語」のスタート地点に立つこの犬を「ALLEN」と名付けたのは、もしかしたら“神の視点”だったのかも。

※ ここに「犬のアレン」が出てきたのも、そういうことなんでしょうか…たぶん。
      ⇓
P8140164sallen.jpg (画像:『D.Gray-man 26』 P193より)


そうそう  思い出しました。 
しばらく前に、星野先生がインスタで このモデルになった犬のカレンちゃんのことをUPされていたので載せておきますね。

この投稿をInstagramで見る

現在、Dグレ本編ではアレンの過去編を描いています。 そこでは大事な役割を果たすキャラクターのひとり、マナの相棒犬が登場するのですが、実際にモデルになってくれたワンちゃんがいます。 お名前をカレンちゃんといいます。 知人の紹介で取材させていただいたのですが、カレンちゃんと初めて会った時、私がマナの相棒犬としてイメージしていた通りのワンちゃんで、今まさにアレンの過去編を描こうとしている時に、自分が想像していた姿と同じワンちゃんに出会えるなんて、「こんなことがあるんだな」と、感激したのを今でも覚えています。 カレンちゃんは物静かで、綺麗な瞳をしていて、私たちの取材に一生懸命付き合ってくれました。 今年の1月、カレンちゃんは永眠されました。 もう、あの綺麗な瞳が、優しい飼い主さまや、世界を見つめることはないのだと知り、寂しい気持ちと同時に、あんなに深く飼い主さまに愛されていたカレンちゃんはきっと幸せな人生を送れたに違いないと、出会えた時間は短かったですが、そう思いました。 この投稿は、カレンちゃんに感謝を伝えたく、飼い主さまに許可をいただいて書かせていただきました。 飼い主さま、カレンちゃんと出会わせていただき、本当にありがとうございました。 そしてカレンちゃん、きっと今でも、優しい飼い主さまのそばに寄り添っているのではないかと想像しています。 これから私は貴方をモデルにした大事なキャラクターを描かせていただきますね。 あの日、長い時間取材をさせてくれてありがとう。 カレンちゃんの綺麗な瞳を忘れません。貴方に深く感謝します。 カレンちゃんへ、星野桂より。

hoshino katsuraさん(@katsura_5600)がシェアした投稿 -


御冥福を。



残るはマナですね。 そんなに書くことが見つかるか自信がないですがww
それでは。


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コメント

Re: 空がさんへ。

こんばんは。 いつもコメントありがとうございます。

過去編をあらためて確認していきながら、“アレン”の出現(=誕生)が紆余曲折はあっても預言通り実現したことで やはりこれまでいくつも示されていた主人公のキリストフラグを再び意識せざるを得ませんでした。 
新約聖書に幾度も登場する「予言の成就」ですよね。

それは同時に「ネア」にとっての復活の預言そのものでしたし、結局この二人の切っても切れない関係(=ダブル主人公※)を示しているようでなかなか楽しいな、と  ※あくまで私見です

こんな所で盛り上がっているのは私くらいかもしれませんが、いつか本編で謎が解けるまでは 各人で好きなように楽しんで行きたいですね!


> The way of マナも楽しみにお待ちしています。

また変わり映えしない話が続きそうですが、どうか飽きずにお付き合いくださいませ。 それではまたv

「アレンの物語は、犬のアレンから始まった」というところに、読ませていただいて思わずうるっと感動してしまいました。

…本当に美しい流れだなぁ…と…。

うまく具体的に表現できなくてすみませんが、D.Gray-manの流れはいつも美しいですね。

素敵なご解釈をお裾分けくださってありがとうございます。

Dグレの3者の「アレン」が、物語上でそれぞれ「はじまりのアレン」「主役のアレン」「結末のアレン」なんていう感じで、
バトンタッチしながら全部の「アレンの謎」が解けたら…面白いなぁ…♪などと、答えの出ないアレコレを私もつらつらと考えて楽しんでしまいました(*^_^*)

(↑そしてまた今回も御礼と感想ばかりで、「別の見方」的な方面ではサッパリお役に立てませんで)…m(__)m
(脳ミソ鍛えませんと…鋭いツッコミはまだまだお待ちください…今がんばっております!)

The way of マナも楽しみにお待ちしています。
Secre

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Author:キャンピー
Yahoo!ブログから移動して'12年10月25日オープン。
それ以前の日付記事は旧ブログからの訂正版です。

生年:不明。35年前には存ざ(ry
BD/Btype:8月某日(Leo)/AO型
身長:160cm
体重:標準(自称)
家族:5人。夫と子供3人(男・男・男)
好物:漫画はDグレでお腹一杯。

<他ツイフィールまで> http://twpf.jp/ripvansf
   

Dグレの応援お願いします。
漫画「D.Gray-man」は、2004年5月31日発売の『週刊少年ジャンプ27号(6月14日号)』で連載を開始し、2009年『少年ジャンプ22,23合併号』(第186夜)まで掲載。 以降2009年『赤マルジャンプ9月20日号」に第187夜掲載を経た後、第188夜からは同年11月発売の月刊『ジャンプSQ.2009年12月号』で連載再開。そこから2013年刊行の『SQ.2013年2月号』の第218夜までを掲載。 同年『SQ.4月号』誌上で編集部より「再開未定の一時休載」告知。 2年半の長期休載を経て、2015年7月17日発売の季刊誌『ジャンプSQ.CROWN(スクエアクラウン)』に場を移し連載が再開しました。 その後、掲載誌は2018年4月16日発売号より『SQ.RISE(スクエアライズ)』とタイトルを変えてリニューアル。現在も継続中です。 コミックスは2013年11月に24巻発売(第218夜まで収録)・2016年6月3日に25巻発売(第222夜まで)・2019年2月4日に26巻発売(第230夜まで)。      <星野桂先生のインスタグラムアカウント(@Katsura_5600)も現在元気に更新中>   
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