「独裁者」の影。

第213夜の感想記事に埋もれてしまい、重要人物の話を忘れていました。 
マルコム=C=ルベリエ と ハワード・リンク


まずはルベリエ。
彼はルベリエ家の当主になる事を期待され、幼少から帝王教育を受けていたような雰囲気ですが
それ相応に、俗物根性とは無縁の信念の人であるだろうと想像します。

戦争に犠牲を捧げてきたルベリエ家の歴史を背負い、世界平和を心から望むがため その実現の為にはどんな犠牲もいとわず。 
私利私欲に走り他人を犠牲にして 自分だけ旨い汁を吸うつもりはきっとないでしょう。 
自分が犠牲になって解決する事なら、おそらくそれすらも可。
しかしもっと利用価値の高い若い人材が豊富に揃っているのだから、これを使わない手はないということで。

“他人を使う”ということに何の躊躇も無いのは育った環境によるのかな。
他人を使っても自分が使われることは一切無かったでしょうから。


そしてリンク。
で、そんなルベリエに間近で仕える彼にとって、ルベリエはずっと尊敬と憧れの対象だったと思います。
一点の曇りも無い理想の人物として。
傍目からはルベリエのしている事は冷酷無比と見えても そうするだけの深い理由は理解しているから。
ルベリエに心酔している彼は、機会があれば自分も(犠牲になって)役に立とうと考えていたようで。

でも形だけでも中央庁という組織の枠外に出され これから本当の意味で様々な人間と関るうちに、自然と彼の心境にも大きな変化が訪れるのではないでしょうか。



[ここから先は、第213夜のネタバレ感想より] (「独裁者」。この回の表紙絵とルベリエから 風船の地球儀を弄ぶ映画のシーンを連想しましてね^^;)

ビリヤード台のコマを見た時 ちょっと違和感がありましてね。 
こんな大邸宅ならば トラベルセットを広げる場所はあるでしょうに、何だってわざわざココ?って。

そんなわけで いつも通り “違和感=ヒント” と強引に看做しまして、以下考察。


下のコマ絵左。リンクの為に用意された旅の一式の向こうに、ビリヤードのキュー(玉突き棒)と並べた球が一部見えます。
配置は右のコマの方が分かり易いですね。キューの傍に小さめの玉が1つ。あと、菱形に並べた球が9つ。

 213B.jpg

さて、ビリヤードとは。

最初に番号付のカラーボールが9つ 菱形に固めてセットしてあるのは“ナインボール”という遊び方らしく。
“キュー”と呼ぶスティックで 白い玉(“手玉”てだま)を衝き、カラーボール(“的球”まとだま)の若い番号順に当てて それらを台の際に設けた6つの穴(ポケット)に落とし込んで行きます。 
最終目標は9番ボール。
手玉を直接当てなくても、コンビネーション(手球を当てた別の的球が更に9番球を動かす)で、9番ボールがポケットに落とせたら勝者です。


このゲームになぞらえてみた ルベリエの野望。

例えで言うなら、ビリヤードのプレイヤーがルベリエ長官、手玉がリンクかなあと。
リンクには、14番目の宿主 アレン・ウォーカー少年がすっかり懐いている。 
ルベリエにとって“14番目”を操っていくためにどうしても必要な、現在唯一の人材がリンクということでは。

その先の目標としては 
「コンビネーション」よろしく14番目の力を以って9番ボールの伯爵を落とし込む事なんでしょうが
「我々人間が世界の命運を握る」宣言をする以上、

ルベリエにとって ノアの一族はもちろんイノセンスまでもが一掃された
人間だけの世界こそ理想なはず。


イノセンス全ては、ハートさえ消せれば片が付きますもんね。
イメージとしては、14番目の力を擁するウォーカーを持ち上げながら 
ノアもハートのイノセンスも14番目も、全てが相討ちでポケットに消え去る形を狙っているのかな。

どれか一つでも残った日には厄介なことになりますから。


サード達も失敗で千年伯爵に奪われてしまったのではなく、最初から敵陣に送り込むトロイの木馬として造られたって事なのかも。
それを肝心のトクサ達が知らされてなかった事が気になりますが、敵を欺くにはまず味方から。
通常のAKUMAとは違って、彼らも状況次第ではアルマ同様に 伯爵に逆らう自由意志を働かす余地はありそうです。

そう簡単に行くとも思えませんが、彼らをルベリエの都合に合わせた方向にさしむける手段として、
こっちも(彼らにとって身内同然の)リンクが必要」になるのでは。

その気になったサードの開闢孔にかかれば、しぶといノアメモリーでも無事ではいられないでしょうしね。

やはり「リンク」はルベリエにとって、狙った目標と自分を“Link”=繋ぐもの。という意味がありそうだなあ。


ルベリエは、リンクから逐一報告を受けつつ その時々の情勢を睨んで、次のショットをどう運ぶか練り直す腹なんでしょうね。
何でそこまでリンクを信用しているのかって? きっと“そのように育てた自信があるから”では。
始めからその心積もりで孤児らと接するうち、もしかしたら本物の愛情も芽生えているかも知れませんが、
ルベリエという人間は それすら不要と判断した時、バッサリ切り捨てることができるのではと思います。

大義名分の為なら「それはそれ」



「あれ(=14番目)はわたしのものだ。 だからウォーカーを追い詰め・・・」
この台詞には 無力な1人の少年の存在を尊重するような雰囲気は 微塵もありません。
餌として吊るしておいたウォーカーを狙ってアポクリフォスとノアが現れ、とにかく14番目は思惑通り教団を離れた。
その いよいよリンクに期待した大仕事が始まるという肝心な時に、彼は瀕死の重傷で見つかった。
ルベリエにとって正に晴天の霹靂。 青くなったのは当然。 必要なら土下座だってするでしょう。

結局ズゥの助けを得て、リンクはさらにパワーアップして復帰を遂げるおまけまで付き、
彼はあの時の問題を深く掘り下げることを 忘れてしまったようですね。  

破綻の予兆。

リンクが私情から、自分の許可も得ずにウォーカーに会いに行くという行動に出ていたこと。



ルベリエの秘めていた本当の計画を知ることになって、リンクの心境はどうだったのか。

ルベリエをどこまでも信じ、いつでも命を投げ出せるという覚悟は もう骨の髄まで浸透しているはずですが、
やはり寂しかったでしょうね。
それについて不満を抱いたりしてはいけない、と心の中で一生懸命打ち消しても。

長官にとっては理想世界の実現が最大目標で、その為には中央庁や教団すら道具に過ぎなかった。
自分は“AKUMAプラントのカケラ”が何に使われるのかも教えられず持ち出した。
聖戦の役に立てる誉を信じダークマター移植手術を受けた仲間達。
皆を助けようと一人奮闘したにもかかわらずウォーカーは投獄の憂き目にあったが、それも計画の内だったと。

・・・大きな潮流の中、首尾よく事は進んでいるのかもしれないが 何かが違う。



私はアレンの台詞の中でもこれが一番好きなんですが。
「僕はちっぽけな人間だから 大きい世界より目の前のものに心が向く。 切り捨てられません」
ほんとうに、ルベリエとは対極にある人間なんですよね。 「14番目の宿主」は。

人同士の計算づくとは無縁のさえ 踏みにじる形で利用しようとしているルベリエ。
「“14番目”の協力者に成り済まし 密かに奴の信頼を得て監視するのです」



人の“心”を甘く見過ぎていると 必ず痛い目に遭いますよ。 ルベリエさん。



<引用画像>
ジャンプSQ 2012年5月号『D.Gray-man』第213夜より。




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